きめ細かく、なめらかな肌触り。花嫁の何気ない所作でさり気なく表情を変え、気品を醸し出す式服ですが、それは“丹後ちりめん”で作られるからこその魅力です。丹後ちりめんは、選び抜かれた高級絹糸100%で織り上げられる、贅沢な高級絹織物。1メートルあたり約3,000回前後もの強い撚り(より)をかけた緯糸(よこいと)と、撚りのない経糸(たていと)を、職人が交互に織っていきます。織り上げた生地を精錬することで糸が収縮し、緯糸の撚りが戻って生地全体に細かい凹凸のような立体感のある織り模様が生まれます。これが前回でもご紹介した“シボ”。式服を手がける「蒲重」は、この精錬作業の工程で実用新案を取得しています。
「わが社が扱う絹糸は、その中でも特別に上質なものだけ」と胸を張るのは蒲重の蒲田さん。シルクとも呼ばれる絹糸ですが、これは桑の葉を食べて成長した蚕(かいこ)が、マユを作るために紡ぎ出す糸のこと。生きものであるだけにその状態は様々で、品質によって細かくランク付けされています。蒲重が扱うのは最も高い品質を指す6Aランク。仕入先の絹糸業者は、ヨーロッパの名だたるグランドメゾンも熱心にラブコールを送る、世界的にも信頼のおける業者です。「この絹糸だからこそ、気品溢れる仕上がりになります。古典柄である鶴や花などを組み合わせ、花嫁さんの神聖さを質感とデザインで強調しているんですよ」。